交通事故

(2) 傷害事案(後遺障害のない場合)の損害額の算定基準

1 傷害事案の積極損害について

交通事故の傷害事案の積極損害の主な項目としては、次のものが挙げられます。
1 治療費関係
2 付添費用
3 通院交通費
4 入院雑費
5 義肢などの装具費用
6 その他の費用

傷害事案の治療関係費について

治療関係費として認められる範囲などについて、たとえば「赤い本(弁護士会基準)」では、主に、次のような趣旨が記載されています。
① 治療費
必要かつ相当な実費全額が認められる。
② 鍼灸、マッサージ費用、器具薬品代等
症状により有効かつ相当な場合、ことに医師の指示がある場合などは認められる傾向にある。
③ 温泉治療費など
医師の指示があるなど、治療上有効かつ必要がある場合に限り認められるが、認められた場合でも額が制限される傾向にある。

傷害事案の付添看護費について

1 入院付添費用

まず、「赤い本(裁判所基準)」では、「医師の指示または症状の程度、被害者の年齢などにより必要がある場合は、職業付添人のときはその実費の全額、近親者の付添人のときは1日につき6500円が被害者本人の損害として認められる」との記載があります。

次に、「青本(裁判所基準)」では、職業付添人の場合は実費全額、近親者付添の場合は1日につき5500円~7000円とされています。

これら裁判所基準に対して、自賠責基準は、原則として12歳以下の子供に近親者等が付き添った場合には1日につき4100円としています。

2 通院付添費用

まず、「赤い本(裁判所基準)」では、症状または幼児など必要と認められる場合には、被害者本人の損害として1日につき3300円が認められるとの記載があります。

次に、「青本(裁判所基準)」では、幼児・老人・身体障害者など必要がある場合、1日につき3000円~4000円とされています。

これら裁判所基準に対して自賠責の「支払基準」では、医師が通院看護の必要性を認めた場合や、12歳以下の子供の場合は、いわゆる職業付添人のときは必要かつ妥当な実費の範囲で認められ、近親者等の付添のときは1日につき2050円が認められるとしています。

2 傷害事案の消極損害について

傷害事案の消極損害の代表的なものとしては、休業損害があります。

休業損害の自賠責基準について

まず、損害として認められる額ですが、休業による収入の減収があった場合、または、有給休暇を使用した場合に 1日につき、原則として5700円としています。ただし、証拠などによって1日につき5700円を超えることが 明らかなときは、1万9000円を限度として認められます。なお、家事従事者についても、休業による減少があった ものとみなすとされています。
次に、休業損害の対象となる日数が問題となります。これについては、実休業日数を基準とし、被害者の傷害の 態様や実治療日数その他の事情を勘案して治療期間の範囲内で認められる場合があります。

給与所得者(サラリーマン、公務員等)の休業損害の裁判所基準について

「赤い本(弁護士会基準)」では、次のように説明されています。
まず、給与所得者については、事故前の収入を基礎として、受傷によって休業したことによる現実の収入減が 損害とされていまます。ここに事故前の収入とは、事故前の3か月の収入のことをいう扱いがされています。
なお、現実の収入減が無い場合であっても、有給休暇を使用したときは休業損害として認められます。
さらに、休業中に昇給や昇格のあった後はその収入を基礎とし、休業に伴う賞与の減額・不支給、昇給、 昇進の遅延による損害も認められるとの記載があります。

事業所得者(自営業者など)の休業損害の裁判所基準について

「赤い本(弁護士会基準)」では、現実の収入減があった場合に損害として認められるとの記載があります。 また、休業中の固定費の支出は、事業の維持・存続のために必要やむを得ないものは損害として認められる との記載があります。

3 傷害事案の慰謝料について

傷害事案の慰謝料の自賠責基準について

まず慰謝料の額ですが、1日につき4200円とされています。
次に、慰謝料の対象となる日数については、治療を開始して終了するまでの治療期間と、 実際に治療した実治療日数を2倍した日数を比較して、その少ない方の日数とするのが通例です。

傷害事案の慰謝料の裁判所基準について

赤い本と青本とは、一般的な慰謝料の額を一覧表にしています。

まず、赤い本では、「別表Ⅰ」を参考にします。 → 赤い本 入通院慰謝料 別表Ⅰ
表の見方ですが、入院のみの場合は入院期間に該当する額、通院のみの場合は通院期間に該当する額とし、入院後に通院があった場合は該当する月数が交差するところの額とされます。なお、慰謝料算定のための通院期間については、通院が長期にわたって、かつ、不規則である場合は、実通院日数の3.5倍程度を目安とすることがあるとされています。また、額についても、傷害の部位、程度によっては「別表Ⅰ」の金額の20~30パーセント程度増額するとされています。
次に、赤い本では、いわゆるむち打ち症で、いわゆる他覚症状のない場合は、「別表Ⅱ」を使用するとされています。 → 赤い本 入通院慰謝料 別表Ⅱ

この場合、慰謝料算定のための通院期間は、治療開始から終了(症状固定)までの通院期間を限度として、実治療日数の3倍程度を目安とするとされています。

最後に、青本では、「入・通院慰謝料表」を参考にします。→ 青本 別表

入・通院慰謝料表」では、該当する欄の上限額と下減額の範囲内において妥当な金額を決定するとされています。また、症状が特に重い場合は、上限の2割増程度の金額までの加算を考慮するとされています。

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すぎしま法律事務所 弁護士 杉島健二(岐阜県弁護士会所属)

当事務所は、交通事故の被害者側の損害賠償請求を最重点業務としています。これまで、多くの死亡事故や後遺症のある事故を解決してきました。担当してきた後遺症は、高次脳機能障害、遷延性意識障害(いわゆる「植物状態」)、CRPS、大動脈解離、脊柱や各関節の変形障害・運動障害、むち打ちなどの神経症状など、多種多様です。弁護士費用特約が使えます。

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