交通事故

(3) 後遺障害事案の損害額の算定基準

1 後遺障害事案における損害の種類と損害賠償額の基準について

後遺障害事案における損害には、後遺症逸失利益、後遺症慰謝料、将来介護費などがあります。

後遺障害事案における損害についても、自賠責基準、任意保険基準、裁判所基準があります。

2 後遺症逸失利益の損害額の算定基準について(裁判所基準)

 算定式について

 後遺症逸失利益の具体的な額は、基礎収入に労働能力喪失率を乗じ、さらに中間利息を控除するため係数であるライプニッツ係数(中間利息控除係数)を乗じて算出します。 計算式を示すと、次のとおりになります。
(後遺症逸失利益) = (基礎収入) × (労働能力喪失率) × (就労可能年数に応じたライプニッツ係数:中間利息控除係数)

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後遺症逸失利益の算定の基礎となる基礎収入について

 給与所得者については、事故前の収入を基礎として算出するのが原則です。

自営業者、自由業者、農林水産業者などについては、申告所得を参考にしますが、申告額と実収入額が異なる場合には立証があれば実収入額を基礎とします。

家事従事者については、賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢平均の賃金額を基礎とします。また、有職の主婦の場合、実収入が上記の平均賃金以上のときは実収入により、平均賃金より下回るときは平均賃金により算定します。

学生・生徒・幼児などについては、賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、男女別善年齢平均の賃金額を基礎とするのが原則です。

高齢者や年金受給者などの場合は、就労の蓋然性があれば、賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、男女別、年齢別平均の賃金額を基礎とします。

労働能力喪失率という概念について

労働能力喪失率とは、認定された後遺障害等級に応じて喪失したとされる労働能力の割合を指します。
交通事故における後遺障害という概念は労働能力の喪失を伴うのが通常ですから、後遺障害等級の認定を受けるということは、労働能力の全部または一部を喪失したことを意味します。

そこで、後遺症逸失利益の算定にあたっては被害者の基礎収入に労働能力喪失率を乗じて1年あたりの後遺症逸失利益の額を算出し、これに就労可能年数に応じたライプニッツ係数を乗じてその被害者の生涯にわたる後遺症逸失利益の具体的な額を算定するのです。
なお、この労働能力喪失率は、自賠責の「支払基準」の別表Ⅰに、後遺障害等級第1級から第14級までの程度に応じて定められてており(自賠責の「支払基準」の 別表Ⅰは、こちら から。)、裁判実務においてもこれに倣うのが通例といえます。

就労可能年数や労働能力喪失期間という概念について

 後遺症逸失利益とは、後遺障害を負ってしまったため働いて得られなくなった利益のことですから、後遺症逸失利益が認められる期間は、被害者が働くことができる年齢に限定されることになります。そこで、後遺症逸失利益を算定するために、就労可能年数や労働能力喪失期間という概念が必要となってきます。
この就労可能年数や具体的な労働能力喪失期間については、原則として「18歳から67歳まで」の範囲内とされるのが原則ですが、例外や修正などもあります。
たとえば、「赤い本(裁判所基準)」では、まず、労働能力喪失期間の始期については、症状固定日を原則としますが、未就労者の就労の始期については18歳とし、大学卒業を前提とする場合は大学卒業時とされています。

他方、労働能力喪失期間の終期は、原則として67歳までとされています。ただし、症状固定時から67歳までの年数が平均余命の2分の1より短くなる高齢者の労働能力喪失期間は原則として平均余命の2分の1とされています。

中間利息控除について

稼働による収入は、生きていれば、本来は、毎月に一か月分ずつ受け取るもので、将来の分までをまとめて一括に受け取るものではありません。

しかし、後遺障害逸失利益として賠償を受けるときには、将来の分をまとめて一括に受け取ることになりますから、その分「前払い」をうけることになります。そして、「前払い」を受けた分は、その後、本来受け取るときまでに利息が発生し、その利息分は「もらいすぎ」になりますから、この「もらいすぎ」の利息分を控除する必要が出てきます。これを中間利息控除といいます。

この中間利息控除を実現するためには、就労可能年数に対応したライプニッツ係数を乗じる方法がとられます。

なお、ライプニッツ係数を導く際の利率については、民事法定利率である5%とされています(最高裁平成17年6月14日判決)。

ライプニッツ係数表は、こちらをご覧ください。 → ライプニッツ係数表

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3 後遺症慰謝料について

後遺症慰謝料の自賠責基準について

後遺症慰謝料の自賠責基準は、次の通りです。

①自動車損害賠償保障法施行令別表第1の場合

第1級第2級
1,600万円1,163万円

②自動車損害賠償保障法施行令別表第2の場合

第1級第2級第3級第4級
1,100万円958万円829万円712万円
第5級第6級第7級第8級
599万円498万円409万円324万円
第9級第10級第11級第12級
245万円187万円135万円93万円
第13級第14級
57万円32万円

後遺症慰謝料の裁判所基準

① 後遺症慰謝料の裁判所基準のうち、「赤い本」及び「青本」に記載されている基準は、次の表のとおりです。

なお、表が崩れて見えにくい方は、こちらをご覧ください。→ 後遺症慰謝料の基準額

(単位:万円)

赤い本青本
第1級28002700~3100
第2級23702300~2700
第3級19901800~2200
第4級16701500~1800
第5級14001300~1500
第6級11801100~1300
第7級1000900~1100
第8級830750~870
第9級690600~700
第10級550480~570
第11級420360~430
第12級290250~300
第13級180160~190
第14級11090~120

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すぎしま法律事務所 弁護士 杉島健二(岐阜県弁護士会所属)

当事務所は、交通事故の被害者側の損害賠償請求を最重点業務としています。これまで、多くの死亡事故や後遺症のある事故を解決してきました。担当してきた後遺症は、高次脳機能障害、遷延性意識障害(いわゆる「植物状態」)、CRPS、大動脈解離、脊柱や各関節の変形障害・運動障害、むち打ちなどの神経症状など、多種多様です。弁護士費用特約が使えます。

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