交通事故によるむち打ち症の損害賠償請求の進め方
むち打ち症とは。
むち打ち症とは、交通事故などの衝撃により、頭部(首)が激しく揺さぶられることによって生じる頚部(首)の挫傷や捻挫(ねんざ)を言います。医学的には、外傷性頚部症候群や頚部ねん挫などと言われることもあります。
交通事故によりむち打ち症になったらどうするか。
交通事故によりむち打ち症になった場合、整形外科や接骨院に通院して治療を受けるのが通常です。
その治療の治療費は、加害者側の保険会社が支払ってくれますが、一定期間を経過すると治療費の支払いは打ち切られます。
治療費の支払いが打ち切られた後は、自賠責保険や健康保険、あるいは、ご自身が加入しエイル人士万象保険を使って治療を継続することも可能です。
むち打ち症の症状が治らない場合はどうするのか
むち打ち症の症状が、約6カ月治療しても治らない場合は、その残った障害が後遺障害であると主張して、自賠責後遺障害の申請をします。
自賠責調査事務所に後遺障害であると認定されると、加害者に対して、後遺障害逸失利益や後遺障害慰謝料を請求できるようになります。
むち打ち症の後遺障害は何等級に認定されるのか
① 認定される等級について
後遺障害のあるむち打ち症は、その症状が、画像所見や神経学的検査、診断書などの客観的な医学所見などによって医学的に証明できる場合は、「局部に頑固な神経症状を残すもの」として、12級13号に認定されます。
他方、医学的に証明できなくても、症状の一貫性や継続性、治療状況などの観点から、その症状が医学的に説明できるものについては、「局部に神経症状を残すもの」として、14級9号に認定されます。
② 認定の実例、ポイントについて
では、岐阜県内で生じたむち打ち症について、当事務所が担当した実例について、認定票の記載の検討を通じて、認定のポイントを見ていきましょう。
実例の① ー 12級に認定された実例
ア 認定票の記載
<結論>
自賠法施行令別表第一第12級13号に該当するものと判断します。
<理由>
頸椎捻挫に伴う頚部痛、左上肢のシビレ、疼痛等の症状については、提出の画像上、椎間板の突出による神経根の圧迫が認められること、また神経学的所見として、後遺障害診断書上、スパーリングテスト左陽性、イートンテスト陽性の所見が認められていることから、他覚的に神経系統の障害が証明されるものと捉え、「局部に頑固な神経症状を残すもの」として別表第二第 1 2級1 3号に談当するものと判断します。
イ 認定票の記載の検討
子の認定票は、症状に画像上の所見と神経学的所見があることを理由に、他覚的に神経系統の障害が(医学的に)証明できるものとして、「局部に頑固な神経症状を残すもの」として12級を認定しています。
このように、画像所化にゃ神経学的所見、あるいは、診断書などの客観的な医学的所見がある症状は、12級3号に認定されます。
実例の② ー 14級に認定された実例の1
ア 認定票の記載
<結論>
自賠法施行令別表第二第14級9号に該当するものと判断します。
<理由>
左足の痛み等の症状については、提出の画像上、明らかな左第4中足骨骨折は認め難いものの、左楔状骨の骨折が認められ、骨折部の骨癒合は良好であり関節面の不整も認められないことから、他覚的に神経系統の障害が証明されるものとは捉えられませんが、受傷形態、骨折の状態等を勘案すると、将来においても回復が困難と見込まれる障害と捉えられることから、「局部に神経症状を残すもの」として別表第二第14級9号に該当するものと判断します。
イ 認定票の記載の検討
この認定票は、まず、画像所見で異常が認められないことから、他覚的に神経系統の障害が証明されるものとは捉えられないとして、12級の認定を否定しています。
しかし、受傷形態、骨折の状態等を勘案すれば、将来においても回復が困難と見込まれる障害と捉えられることができるとして、「局部に神経症状を残すもの」として14級9号を認定しています。
このように、症状が医学的に証明できないとして12級に認定されない場合でも、受傷形態や治療経過などを考慮して14級に認定されることがあります。その際には、症状の一貫性や継続性が重視されるのが通例です。
実例の③ ー 14級に認定された実例の2
ア 認定票の記載
<結論>
自賠法施行令別表第二第14級9号に該当するものと判断します。
<理由>
頚部受傷後の後頭部、両側肩背部に疼痛等とのことについては、提出の画像上、本件事故による骨折や脱臼等の明らかな外傷性の異常所見は認められず、また提出の後遺障害診断書上からも神経学的異常所見は認められないことからすれば、他覚的に神経系統の障害が証明されるものとは捉え難いものの、治療状況や症状経過等を勘案すれば、将来においても回復が困難と見込まれる障害と捉えられることから、「局部に神経症状を残すもの」として別表第二第14 級9号に該当するものと判断します。
イ 認定票の記載の検討
この認定票は、まず、症状に医学的所見や神経学的所見がないことから、12級の認定を否定しています。
しかし、治療状況や症状経過等を勘案すれ1、将来においても回復が困難と見込まれる障害と捉えられることから、14級を認定しています。
実例の④ ー 非該当とされた実例
ア 認定票の記載
<結論>
自賠責保険(共済)における後遺障害には該当しないものと判断します。
<理由>
頚椎捻挫後の頚部から後頭部にかけての痛みについては、提出の画像上、本件事故による骨折、脱臼等の外傷性の異常所見は認められず、また、提出の診断書等からも症状の裏付けとなる客観的な医学的所見に乏しいことに加え、その他症状経過、治療状況等も勘案した結果、将来においても回復が困難と見込まれる障害とは捉え難いことから、自賠責保険(共済)における後遺障害には該当しないものと判断します。
イ 認定票の記載の検討
この認定票は、まず、画像上の所見や医学的所見がないことから、12級の後遺障害には該当しないとしています。
次に、症状経過や趙状況などの観点からも、生涯においても回復が困難と見込まれる障害、すなわち、後遺障害ではないとしています。その結果、14級の認定もされていません。
後遺障害のあるむち打ち症について、請求できる損害について
むち打ち症について後遺障害12級に認定されると、290万円の後遺障害慰謝料と、14パーセントの労働能力喪失率を前提として計算された後遺障害逸失利益を請求できます。
他方、14級に認定されると、110万円の後遺障害慰謝料と、5パーセントの労働能力喪失率を前提として計算された後遺障害逸失利益を請求できます。
但し、後遺障害逸失利益については、むち打ち症の後遺障害の場合、労働能力喪失期間が3年から年に制限されることが多い点に注意が必要です。
むち打ち症の事案を、すぎしま法律事務所に依頼するメリットは何か
すぎしま法律事務所・弁護士杉島健二は、これまで岐阜県内のむち打ち症の被害者の損害賠償請求を、多く担当してきました。
加害者側保険会社から治療費の支払いを打ち切られた場合でも、自賠責保険や健康保険、人身傷害保険を使って治療を継続し、後遺障害等級の獲得に成功した実例もあります。
保険会社からの連絡や交渉のわずらわしさから解放されるというメリットもあります。
ぜひ、ご相談ください。メールでのご連絡は、こちらから、どうぞ。
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