労働問題

トラック運転手の待機時間の労働時間性 

問題の所在

 トラックの運転者は、トラックを運転するだけでなく、お客さんのところで荷物やコンテナの積み下ろしの際、トラック内で待機することがあります。

 トラックの運転手が、自分の勤務先である運送会社に残業代を請求すると、こうした待機時間が休憩に当たるとして、この時間の残業代を支払ってこないことが多いです。

 そこで、トラック運転者の待機時間が労働時間制を有するかが問題となります。

法令や裁判例

 通達(昭和33年10月11日基収第6286号)は、「「労動」とは、一般的に、使用者の指揮監督のもとにあることをいい、必ずしも現実に、精神又は肉体を活動させていることを要件とはせず、したがって、例えば荷物取扱の事業場において、荷物の積込係が、貨物自動車の到着を待機して身体を休めている場合とか、運転手が2名乗り込んで交代で運転にあたる場合において運転しない者が助手席で休息し、又は仮眠しているときであってもそれは「労動」であり、その状態にある時間(これを一般に「手待ち時間」という。)は労働時間である。」として、一般的に手待ち時間を労働時間と認めています。

 また、横浜地方裁判所平成26年4月24日判決は、「出荷場や配送先における待機時間は,いずれも待ち時間が実作業時間に当たり,使用者である被告の指揮命令下に置かれたものと評価することができるものであり,その待機時間中に原告らがトイレに行ったり,コンビニエンス・ストアに買い物に行くなどしてトラックを離れる時間があったとしても,これをもって休憩時間であると評価するのは相当ではない。」としています。

 他方、東京地裁令和元年6月26日判決、および、大阪地裁平成18年6月15日判決は、手待ち時間ないし待機時間の労働時間制を否定しているようですが、これらの判決の事案では、運転者が飲酒をしたりパチンコをしたりする自由が認められている場合で、通常の待機とは異なる事案と言えるでしょう。

具体的な判断基準

 トラック運転者の待機時間が、労働時間に当たるかとどうかという問題は、そのトラック運転者が、その間、使用者の指揮命令下にいたかどうかで判断されます。

 具体的には、

① 車両から離れることができるかどうか
② 車両や積み荷を監視する義務があるか。
③ 停車中の時間を自由に利用できるか。
④ 次の作業の開始時間が決まっているか。

によって、判断することになるでしょう。

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関連する労働基準法の条文

(労働時間)
第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
② 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

(時間外及び休日の労働)
第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
② 前項の協定においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 この条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができることとされる労働者の範囲
二 対象期間(この条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる期間をいい、一年間に限るものとする。第四号及び第六項第三号において同じ。)
三 労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる場合
四 対象期間における一日、一箇月及び一年のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間又は労働させることができる休日の日数
五 労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするために必要な事項として厚生労働省令で定める事項
③ 前項第四号の労働時間を延長して労働させることができる時間は、当該事業場の業務量、時間外労働の動向その他の事情を考慮して通常予見される時間外労働の範囲内において、限度時間を超えない時間に限る。
④ 前項の限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間及び一年について三百二十時間)とする。
⑤ 第一項の協定においては、第二項各号に掲げるもののほか、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め百時間未満の範囲内に限る。)並びに一年について労働時間を延長して労働させることができる時間(同号に関して協定した時間を含め七百二十時間を超えない範囲内に限る。)を定めることができる。この場合において、第一項の協定に、併せて第二項第二号の対象期間において労働時間を延長して労働させる時間が一箇月について四十五時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間)を超えることができる月数(一年について六箇月以内に限る。)を定めなければならない。
⑥ 使用者は、第一項の協定で定めるところによつて労働時間を延長して労働させ、又は休日において労働させる場合であつても、次の各号に掲げる時間について、当該各号に定める要件を満たすものとしなければならない。
一 坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務について、一日について労働時間を延長して労働させた時間 二時間を超えないこと。
二 一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間 百時間未満であること。
三 対象期間の初日から一箇月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の一箇月、二箇月、三箇月、四箇月及び五箇月の期間を加えたそれぞれの期間における労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の一箇月当たりの平均時間 八十時間を超えないこと。
⑦ 厚生労働大臣は、労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするため、第一項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項について、労働者の健康、福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して指針を定めることができる。
⑧ 第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者は、当該協定で労働時間の延長及び休日の労働を定めるに当たり、当該協定の内容が前項の指針に適合したものとなるようにしなければならない。
⑨ 行政官庁は、第七項の指針に関し、第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。
⑩ 前項の助言及び指導を行うに当たつては、労働者の健康が確保されるよう特に配慮しなければならない。
⑪ 第三項から第五項まで及び第六項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定は、新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務については適用しない。

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