医療法人が行うことができる業務は、医療法に定めがあります。
1 本来業務
本来業務とは、医療法人が本来行うことを予定されている病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院の運営をいいます(医療法39条)。
2 附随業務
附随業務とは、本来業務そのものではないが、本来業務を遂行するために必要な本来業務に一般的に付随する業務をいいます。
附随業務について、厚生労働省が発表した「医療法人の業務範囲」<平成 31 年3月 29 日現在>(※1)では、以下の通りとされています。
① 病院等の施設内で当該病院等に入院若しくは通院する患者及びその家族を対象として行われる業務又は病院等の職員の福利厚生のために行われる業務であって、医療提供又は療養の向上の一環として行われるもの。
したがって、病院等の建物内で行われる売店、敷地内で行われる駐車場業等は、病院等の業務に附随して行われるものとされ、敷地外に有する法人所有の遊休資産を用いて行われる駐車場業は附随する業務に含まれないものとして取り扱われるとされています。
② 病院等の施設外で当該病院等に通院する患者を対象として行われる業務であって、当該病院等において提供される医療又は療養に連続して行われるもの。
したがって、当該病院等への、又は、当該病院等からの患者の無償搬送は、病院等の業務に附随して行われるものとされ、当該病院等以外の病院から同じく当該病院等以外の病院への患者の無償搬送は附随する業務に含まれないものとして取り扱われるとされています。
③ ①及び②において、当該法人が自らの事業として行わず、当該法人以外の者に委託して行う場合
当該法人以外の者が行う事業内容が、①又は②の前段に該当するものであるときは、当該法人以外の者への委託は附随する業務とみなし、①又は②の前段に該当しないものであるときは、附随する業務に含まれないものとして取り扱われるとされています。
3 附帯業務
附帯業務とは、本来業務でも附随業務でもないが、定款または寄付行為に定めがある場合に、本来業務に支障がない範囲で認められる一定の業務をいいます(医療法42条)。
ここに、一定の業務とは、次の8つの業務をいます。
① 医療関係者の養成又は再教育
② 医学又は歯学に関する研究所の設置
③ 第三十九条第一項に規定する診療所以外の診療所の開設
④ 疾病予防のために有酸素運動(継続的に酸素を摂取して全身持久力に関する生理機能の維持又は回復のために行う身体の運動をいう。次号において同じ。)を行わせる施設であつて、診療所が附置され、かつ、その職員、設備及び運営方法が厚生労働大臣の定める基準に適合するものの設置
⑤ 疾病予防のために温泉を利用させる施設であつて、有酸素運動を行う場所を有し、かつ、その職員、設備及び運営方法が厚生労働大臣の定める基準に適合するものの設置
⑥ 前各号に掲げるもののほか、保健衛生に関する業務
⑦ 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第二条第二項及び第三項に掲げる事業のうち厚生労働大臣が定めるものの実施
⑧ 老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第二十九条第一項に規定する有料老人ホームの設置
4 収益業務
収益業務とは、社会医療法人だけに認められる、本来業務、附随業務、付帯業務のいずれにも属さない業務で、定款又は寄附行為の定めるところにより、本来業務に支障のない範囲で、その収益を当該社会医療法人が開設する病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院の経営に充てることを目的として行うことができる厚生労働大臣が定める業務をいいます。
※1 「医療法人の業務範囲」<平成 31 年3月 29 日現在>の厚生労働省のサイトは、こちら。
関連する法律の条文
医療法
第三十九条 病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所、介護老人保健施設又は介護医療院を開設しようとする社団又は財団は、この法律の規定により、これを法人とすることができる。
2 前項の規定による法人は、医療法人と称する。
第四十二条 医療法人は、その開設する病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院(当該医療法人が地方自治法第二百四十四条の二第三項に規定する指定管理者として管理する公の施設である病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院(以下「指定管理者として管理する病院等」という。)を含む。)の業務に支障のない限り、定款又は寄附行為の定めるところにより、次に掲げる業務の全部又は一部を行うことができる。
一 医療関係者の養成又は再教育
二 医学又は歯学に関する研究所の設置
三 第三十九条第一項に規定する診療所以外の診療所の開設
四 疾病予防のために有酸素運動(継続的に酸素を摂取して全身持久力に関する生理機能の維持又は回復のために行う身体の運動をいう。次号において同じ。)を行わせる施設であつて、診療所が附置され、かつ、その職員、設備及び運営方法が厚生労働大臣の定める基準に適合するものの設置
五 疾病予防のために温泉を利用させる施設であつて、有酸素運動を行う場所を有し、かつ、その職員、設備及び運営方法が厚生労働大臣の定める基準に適合するものの設置
六 前各号に掲げるもののほか、保健衛生に関する業務
七 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第二条第二項及び第三項に掲げる事業のうち厚生労働大臣が定めるものの実施八 老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第二十九条第一項に規定する有料老人ホームの設置
第四十二条の二 医療法人のうち、次に掲げる要件に該当するものとして、政令で定めるところにより都道府県知事の認定を受けたもの(以下「社会医療法人」という。)は、その開設する病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院(指定管理者として管理する病院等を含む。)の業務に支障のない限り、定款又は寄附行為の定めるところにより、その収益を当該社会医療法人が開設する病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院の経営に充てることを目的として、厚生労働大臣が定める業務(以下「収益業務」という。)を行うことができる。
一 役員のうちには、各役員について、その役員、その配偶者及び三親等以内の親族その他各役員と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者が役員の総数の三分の一を超えて含まれることがないこと。
二 社団たる医療法人の社員のうちには、各社員について、その社員、その配偶者及び三親等以内の親族その他各社員と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者が社員の総数の三分の一を超えて含まれることがないこと。
三 財団たる医療法人の評議員のうちには、各評議員について、その評議員、その配偶者及び三親等以内の親族その他各評議員と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者が評議員の総数の三分の一を超えて含まれることがないこと。
四 救急医療等確保事業(当該医療法人が開設する病院又は診療所の所在地の都道府県が作成する医療計画に記載されたものに限る。次条において同じ。)に係る業務を当該病院又は診療所の所在地の都道府県(次のイ又はロに掲げる医療法人にあつては、それぞれイ又はロに定める都道府県)において行つていること。
イ 二以上の都道府県において病院又は診療所を開設する医療法人(ロに掲げる者を除く。) 当該病院又は診療所の所在地の全ての都道府県
ロ 一の都道府県において病院を開設し、かつ、当該病院の所在地の都道府県の医療計画において定める第三十条の四第二項第十四号に規定する区域に隣接した当該都道府県以外の都道府県の医療計画において定める同号に規定する区域において診療所を開設する医療法人であつて、当該病院及び当該診療所における医療の提供が一体的に行われているものとして厚生労働省令で定める基準に適合するもの 当該病院の所在地の都道府県
五 前号の業務について、次に掲げる事項に関し厚生労働大臣が定める基準に適合していること。
イ 当該業務を行う病院又は診療所の構造設備
ロ 当該業務を行うための体制
ハ 当該業務の実績
六 前各号に掲げるもののほか、公的な運営に関する厚生労働省令で定める要件に適合するものであること。
七 定款又は寄附行為において解散時の残余財産を国、地方公共団体又は他の社会医療法人に帰属させる旨を定めていること。
2 都道府県知事は、前項の認定をするに当たつては、あらかじめ、都道府県医療審議会の意見を聴かなければならない。
3 収益業務に関する会計は、当該社会医療法人が開設する病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院(指定管理者として管理する病院等を含む。)の業務及び前条各号に掲げる業務に関する会計から区分し、特別の会計として経理しなければなら
ない。
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〒500-8833 岐阜市神田町1-8-4 プラドビル7A
すぎしま法律事務所 弁護士 杉島健二(岐阜県弁護士会所属)
ビルの7階に事務所があります。エレベーターがあります。
事務所のあるビルのすぐ前が、「商工会議所前」(旧:市役所南庁舎前)のバス停です。