医療法人の法的基礎知識

社団医療法人の理事長

1 社団医療法人の理事長の意義

 社団医療法人の理事長は、医療社団法人の代表者で、社団医療法人の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する者をいいます(医療法46条の6の2)。

 理事長は、理事会において理事の中から選任され、また、解任されます(医療法46条の71項第3号)。

 理事長は、原則として、医師または歯科医師である理事から選任される必要があります(医療法46条の5第1項)。

2 社団医療法人の理事長の権限

 先に述べたように、社団医療法人の理事長は、社団医療法人の代表権、及び、社団医療法人の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有しています。

3 社団医療法人の理事長の義務
(1) 善管注意義務と忠実義務

 理事である理事長は、社団医療法人に対して委任契約上の善良な管理者としての注意義務を負います(医療法46条の5第4項が準用する民法644条)。

 また、理事である理事長は、医療法人に対して、法令及び定款並びに社員総会の決議を遵守し、社団医療法人のため忠実にその職務を行わなければならないとする忠実義務も負います(医療法46条の6の4が準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律83条)。

(2) 競業取引及び利益相反取引等(医療法46条の6の4が準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律84条)

 理事である理事長は、以下の3つの取引をする場合には、社員総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない、とされています。

 ① 理事が自己又は第三者のために当該社団医療法人の事業の部類に属する取引をしようとするとき。

 ② 理事が自己又は第三者のために当該社団医療法人と取引をしようとするとき。

 ③ 当該社団医療法人が理事の債務を保証することその他理事以外の者との間において当該社団医療法人と当該理事との利益が相反する取引をしようとするとき。

(3) 社員総会における説明義務(医療法46条の3の4)

 理事である理事長は、社員総会において、社員から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない、とされています。

(4) 理事会に対する報告義務(医療法46条の6の4が準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律91条2項)

 理事長は、原則として、3カ月に1回以上、自己の職務の執行の状況を理事会に報告しなければならない、とされています。

(5) 監事に対する報告義務(医療法46条の6の3)

 理事である理事長は、社団医療療法人に著しい損害を及ぼすおそれのある事実があることを発見したときは、直ちに、当該事実を監事に報告しなければならない、とされています。

4 社団医療法人の理事長の責任
(1) 医療法人に対する損害賠償義務(医療法47条)

 理事である理事長は、その任務を怠つたときは、当該医療法人に対し、これによつて生じた損害を賠償する責任を負う、とされています。

(2) 第三者に対する損害賠償義務(医療法48条)

 理事である理事長は、その職務を行うについて悪意又は重大な過失があつたときは、これによつて第三者に生じた損害を賠償する責任を負う、とされています。

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関連する法律の条文

医療法

第四十六条の六 医療法人(次項に規定する医療法人を除く。)の理事のうち一人は、理事長とし、医師又は歯科医師である理事のうちから選出する。ただし、都道府県知事の認可を受けた場合は、医師又は歯科医師でない理事のうちから選出することができる。

2 第四十六条の五第一項ただし書の認可を受けて一人の理事を置く医療法人にあつては、この章(次条第三項を除く。)の規定の適用については、当該理事を理事長とみなす。

第四十六条の六の二 理事長は、医療法人を代表し、医療法人の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。

2 前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

3 第四十六条の五の三第一項及び第二項の規定は、理事長が欠けた場合について準用する。

第四十六条の六の三 理事は、医療法人に著しい損害を及ぼすおそれのある事実があることを発見したときは、直ちに、当該事実を監事に報告しなければならない。

第四十六条の六の四 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第七十八条、第八十条、第八十二条から第八十四条まで、第八十八条(第二項を除く。)及び第八十九条の規定は、社団たる医療法人及び財団たる医療法人の理事について準用する。この場合において、当該理事について準用する同法第八十四条第一項中「社員総会」とあるのは「理事会」と、同法第八十八条第一項中「著しい」とあるのは「回復することができない」と読み替えるものとし、財団たる医療法人の理事について準用する同法第八十三条中「定款」とあるのは「寄附行為」と、「社員総会」とあるのは「評議員会」と、同法第八十八条の見出し及び同条第一項中「社員」とあるのは「評議員」と、同項及び同法第八十九条中「定款」とあるのは「寄附行為」と、同条中「社員総会」とあるのは「評議員会」と読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。

第四十七条 社団たる医療法人の理事又は監事は、その任務を怠つたときは、当該医療法人に対し、これによつて生じた損害を賠償する責任を負う。

第四十八条 医療法人の評議員又は理事若しくは監事(以下この項、次条及び第四十九条の三において「役員等」という。)がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があつたときは、当該役員等は、これによつて第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。2 次の各号に掲げる者が、当該各号に定める行為をしたときも、前項と同様とする。ただし、その者が当該行為をすることについて注意を怠らなかつたことを証明したときは、この限りでない。一 理事 次に掲げる行為イ 第五十一条第一項の規定により作成すべきものに記載すべき重要な事項についての虚偽の記載ロ 虚偽の登記ハ 虚偽の公告二 監事 監査報告に記載すべき重要な事項についての虚偽の記載

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

第七十八条 一般社団法人は、代表理事その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。

八十二条 一般社団法人は、代表理事以外の理事に理事長その他一般社団法人を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該理事がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負う。

第八十三条 理事は、法令及び定款並びに社員総会の決議を遵守し、一般社団法人のため忠実にその職務を行わなければならない。

第八十四条 理事は、次に掲げる場合には、社員総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。

 理事が自己又は第三者のために一般社団法人の事業の部類に属する取引をしようとするとき。

 理事が自己又は第三者のために一般社団法人と取引をしようとするとき。

 一般社団法人が理事の債務を保証することその他理事以外の者との間において一般社団法人と当該理事との利益が相反する取引をしようとするとき。

 民法第百八条の規定は、前項の承認を受けた同項第二号又は第三号の取引については、適用しない。

第八十八条 社員は、理事が一般社団法人の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該一般社団法人に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該理事に対し、当該行為をやめることを請求することができる。

 監事設置一般社団法人における前項の規定の適用については、同項中「著しい損害」とあるのは、「回復することができない損害」とする。(理事の報酬等)

第八十九条 理事の報酬等(報酬、賞与その他の職務執行の対価として一般社団法人等から受ける財産上の利益をいう。以下同じ。)は、定款にその額を定めていないときは、社員総会の決議によって定める。

第九十一条 次に掲げる理事は、理事会設置一般社団法人の業務を執行する。

 代表理事

 代表理事以外の理事であって、理事会の決議によって理事会設置一般社団法人の業務を執行する理事として選定されたもの 前項各号に掲げる理事は、三箇月に一回以上、自己の職務の執行の状況を理事会に報告しなければならない。ただし、定款で毎事業年度に四箇月を超える間隔で二回以上その報告をしなければならない旨を定めた場合は、この限りでない。

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