その他の法律問題のブログ

台風で隣から看板が飛んできて、ウチの屋根が壊れた。賠償請求したい!

ここ数年は、強い台風がいくつかありました。

台風のせいで、「隣の家の看板が飛んできて屋根が壊れた。」、「隣の木の枝が折れて車に傷がついた。」という相談がいくつかありました。

このような場合、相手に賠償請求できるでしょうか?

一般に、相手に損害賠償請求できるのは、相手に故意または過失(不注意や落ち度)がある場合に限られ、結果として損害が生じた場合にすべて賠償請求できるわけではありません(民法709条)。
これは、過失責任の原則といって、人は、一定の注意を尽くして行動すれば、結果として他人に損害を及ぼしても賠償責任を負わないとする考え方です。落ち度がない場合にまで広く賠償責任を負わされてしまうとすれば(結果責任主義)、行動が委縮してしまい、個人の自由や社会の活性化が実現されなくなってしまうからです。

また、建物などの工作物や竹木から他人に損害が生じた場合は、それら物の設置または保存(工作物の場合)や栽植または支持(竹木の場合)に瑕疵がある場合に限って、賠償責任が発生するとされています(民法717条)。危険な物から生じる損害については、過失責任主義を限定し、物に瑕疵がある場合などに責任を拡大するものですが、これも損害が生じた場合すべてに賠償責任を認めるものではありません。

これらを冒頭の例に当てはめてみると、以下のようになります。

まず、建物の場合は、設置や保存に瑕疵があるとき、例えば、看板が外れかけの状態であったとか、建物自体が老朽化して倒壊の恐れがあるときなどであれば、賠償責任が認められることになります。

また、竹木の場合は、大きな枝が折れた状態で今にも落ちてきそうなときとか、木全体が朽ち果てて倒壊しそうなときなどであれば、賠償責任が認められることになります。

このような結論は、被害を被った人にとっては酷かとも思われますが、反面、建物や竹木の所有者の立場からは、被害の結果を完全に防がないと賠償責任を負わされてしまうのは酷ともいえるでしょう。

建物や竹木の所有者(や占有者)はそれらの物の管理に注意するとともに、被害を被りそうな人は保険に入るなどしてリスクを分散する必要があるでしょう。

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