1 実習実施者の意義
実習実施者とは、受け入れた技能実習生に対して、技能実習計画に基づいた技能実習を実施する者をいいます。いわゆる、受入機関と呼ばれることもあります。
2 実習実施機関の役割
実習実施者には、以下の役割があります。
(1) 技能実習の実施
実習実施期間は、技能実習生の受入機関として、技能実習計画に基づき、技能実習生に対する技能実習を実施しなければいけません。
(2) 技能実習計画の作成、及び、認定申請
実習実施者は、技能実習計画を作成し、これを出入国管理庁長官及び厚生労働大臣に提出して、認可を受けないといけません(技能実習法8条1項)。
(3) 実習実施者の報告や届出など
技能実習実施者は、以下のときには、届出をすることが必要です。
ア 技能実習を開始したとき
実習実施者は、技能実習を開始したときは、遅滞なく、開始した日その他主務省令で定める事項を出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣に届け出なければならない、とされています(技能実習法17条)。
イ 技能実習を行わせたとき
実習実施者は、技能実習を行わせたときは、主務省令で定めるところにより、技能実習の実施の状況に関する報告書(実施報告書)を作成し、出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣に提出しなければならない、とされています(技能実習法21条)。
この実施報告書は、技能実習事業年度ごとに、別記様式第十号により、技能実習の実施状況を記載し、翌技能実習事業年度の5月31日までに提出するものとする、とされています(技能実習法施行規則23条1項)。
また、団体監理型技能実習に係る前項の報告書の作成は、実習監理を受ける監理団体の指導に基づいて行わなければならない、とされています(技能実習法施行規則23条2項)。
ウ 技能実習を行わせることが困難となった場合
団体管理型技能実習実施者は、技能実習を行わせることが困難となったときは、遅滞なく、実習管理を受けている監理団体に、以下の事項を通知しなければならない、とされています(技能実習法19条2項、技能実習規則21条2項)。
① 届出者の実習実施者届出受理番号、氏名又は名称及び住所
② 技能実習計画の認定番号、認定年月日及び技能実習の区分
③ 技能実習生の氏名、国籍、生年月日、年齢及び性別
④ 技能実習を行わせることが困難となった事由並びにその発生時期及び原因
⑤ 技能実習生の現状
⑥ 技能実習の継続のための措置
なお、「技能実習を行わせることが困難となったとき」には、技能実習生の失踪、病気、死亡などが該当しえます。
そして、通知を受けた監理団体は、その実習実施者の住所地を管轄する機構の地方事務所・指定所の認定課に対して、技能実習実施困難届出をしなければならない、とされています(技能実習法33条、18条)。
(4) 技能実習責任者、技能実習指導員、生活指導員などの選任
実習実施者は、以下の通り、技能実習責任者、技能実習指導員、生活指導員を選任することにより、技能実習の適正化と技能実習生の保護を図ることが必要です。
ア 技能実習責任者(技能実習規則12条1項)
技能実習責任者とは、自己以外の技能実習指導員、生活指導員、その他の技能実習に関与する職員を監督し、技能実習の進捗状況を管理するほか、以下に掲げる事項を統括管理する者をいいます。
① 技能実習計画の作成に関すること。
② 法第九条第五号(法第十一条第二項において準用する場合を含む。)に規定する技能実習生が修得等をした技能等の評価に関すること。
③ 法又はこれに基づく命令の規定による法務大臣及び厚生労働大臣若しくは出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣又は機構(団体監理型技能実習に係るものである場合にあっては、法務大臣及び厚生労働大臣若しくは出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣若しくは機構又は監理団体)に対する届出、報告、通知その他の手続に関すること。
④ 法第二十条に規定する帳簿書類の作成及び保管並びに法第二十一条に規定する報告書の作成に関すること。
⑤ 技能実習生の受入れの準備に関すること。
⑥ 団体監理型技能実習に係るものである場合にあっては、監理団体との連絡調整に関すること。
⑦ 技能実習生の保護に関すること。
⑧ 技能実習生の労働条件、産業安全及び労働衛生に関すること。
⑨ 国及び地方公共団体の機関であって技能実習に関する事務を所掌するもの、機構その他関係機関との連絡調整に関すること。
イ 技能実習指導員(技能実習法施行規則12条2項)
技能実習生に対して、実習計画に従い技能実習を指導する者をいいます。
技能実習責任者の要件は、次の通りです。
(ア) 実習実施者の常勤の職員または役員であること。
(イ) 修得等をさせようとする技能等について5年以上の経験を有すること。
(ウ) 次の事由に該当しないこと
ⅰ 法第十条第一号から第八号まで又は第十号のいずれかに該当する者
ⅱ 過去五年以内に出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をした者
ⅲ 未成年者
ウ 生活指導員(技能実習規則12条3項)
技能実習生に対して、本来の技能実習以外の普段の生活の指導をする者をいいます。
技能実習責任者の要件は、次の通りです。
(ア) 実習実施者の常勤の職員または役員であること。
(イ) 次の事由に該当しないこと
ⅰ 法第十条第一号から第八号まで又は第十号のいずれかに該当する者
ⅱ 過去五年以内に出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をした者
ⅲ 未成年者
(5) 帳簿類の作成と保管
実習実施者は、技能実習に関して、主務省令で定める帳簿書類を作成し、技能実習を行わせる事業所に備えて置かなければならない、とされています(技能実習法20条)。
そして、その帳簿書類とは、技能実習法施行規則22条1項によれば、以下の書類をいいます。
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関連する法律の条文
技能実習法
第八条 技能実習を行わせようとする本邦の個人又は法人(親会社(会社法(平成十七年法律第八十六号)第二条第四号に規定する親会社をいう。)とその子会社(同条第三号に規定する子会社をいう。)の関係その他主務省令で定める密接な関係を有する複数の法人が技能実習を共同で行わせる場合はこれら複数の法人)は、主務省令で定めるところにより、技能実習生ごとに、技能実習の実施に関する計画(以下「技能実習計画」という。)を作成し、これを出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣に提出して、その技能実習計画が適当である旨の認定を受けることができる。
第十七条 実習実施者は、技能実習を開始したときは、遅滞なく、開始した日その他主務省令で定める事項を出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣に届け出なければならない。
第十九条
2 企業単独型実習実施者は、企業単独型技能実習を行わせることが困難となったときは、遅滞なく、企業単独型技能実習を行わせることが困難となった企業単独型技能実習生の氏名、その企業単独型技能実習生の企業単独型技能実習の継続のための措置その他の主務省令で定める事項を出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣に届け出なければならない。2 団体監理型実習実施者は、団体監理型技能実習を行わせることが困難となったときは、遅滞なく、団体監理型技能実習を行わせることが困難となった団体監理型技能実習生の氏名、その団体監理型技能実習生の団体監理型技能実習の継続のための措置その他の主務省令で定める事項を実習監理を受ける監理団体に通知しなければならない。
第二十条 実習実施者は、技能実習に関して、主務省令で定める帳簿書類を作成し、技能実習を行わせる事業所に備えて置かなければならない。
第二十一条 実習実施者は、技能実習を行わせたときは、主務省令で定めるところにより、技能実習の実施の状況に関する報告書を作成し、出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣に提出しなければならない。
2 前項の規定による報告書の受理に係る事務については、第十八条の規定を準用する。
第三十三条 監理団体は、第十九条第二項の規定による通知を受けた場合その他実習監理を行う団体監理型実習実施者が団体監理型技能実習を行わせることが困難となったと認めるときは、遅滞なく、当該通知に係る事項その他の主務省令で定める事項を出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣に届け出なければならない。
2 前項の規定による届出の受理に係る事務については、第十八条の規定を準用する。
技能実習法施行規則
第十二条 法第九条第六号(法第十一条第二項において準用する場合を含む。)の主務省令で定める基準のうち技能実習を行わせる体制に係るものは、次のとおりとする。
一 技能実習責任者が、自己以外の技能実習指導員、生活指導員その他の技能実習に関与する職員を監督し、技能実習の進捗状況を管理するほか、次に掲げる事項を統括管理することとされていること。
イ 技能実習計画の作成に関すること。
ロ 法第九条第五号(法第十一条第二項において準用する場合を含む。)に規定する技能実習生が修得等をした技能等の評価に関すること。
ハ 法又はこれに基づく命令の規定による法務大臣及び厚生労働大臣若しくは出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣又は機構(団体監理型技能実習に係るものである場合にあっては、法務大臣及び厚生労働大臣若しくは出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣若しくは機構又は監理団体)に対する届出、報告、通知その他の手続に関すること。
ニ 法第二十条に規定する帳簿書類の作成及び保管並びに法第二十一条に規定する報告書の作成に関すること。
ホ 技能実習生の受入れの準備に関すること。
ヘ 団体監理型技能実習に係るものである場合にあっては、監理団体との連絡調整に関すること。
ト 技能実習生の保護に関すること。
チ 技能実習生の労働条件、産業安全及び労働衛生に関すること。
リ 国及び地方公共団体の機関であって技能実習に関する事務を所掌するもの、機構その他関係機関との連絡調整に関すること。
二 技能実習の指導を担当する者として、申請者又はその常勤の役員若しくは職員のうち、技能実習を行わせる事業所に所属する者であって、修得等をさせようとする技能等について五年以上の経験を有し、かつ、次のいずれにも該当しないものの中から技能実習指導員を一名以上選任していること。
イ 法第十条第一号から第八号まで又は第十号のいずれかに該当する者
ロ 過去五年以内に出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をした者
ハ 未成年者
三 技能実習生の生活の指導を担当する者として、申請者又はその常勤の役員若しくは職員のうち、技能実習を行わせる事業所に所属する者であって、前号イからハまでのいずれにも該当しないものの中から生活指導員を一名以上選任していること。
第二十一条 法第十九条第一項の届出は、別記様式第九号によるものとする。
2 法第十九条第一項及び第二項の主務省令で定める事項は、次のとおりとする。
一 届出者の実習実施者届出受理番号、氏名又は名称及び住所
二 技能実習計画の認定番号、認定年月日及び技能実習の区分
三 技能実習生の氏名、国籍、生年月日、年齢及び性別
四 技能実習を行わせることが困難となった事由並びにその発生時期及び原因
五 技能実習生の現状
六 技能実習の継続のための措置
第二十二条 法第二十条の主務省令で定める帳簿書類は、次のとおりとする。
一 技能実習生の管理簿
二 認定計画の履行状況に係る管理簿
三 技能実習生に従事させた業務及び技能実習生に対する指導の内容を記録した日誌
四 企業単独型実習実施者にあっては、入国前講習及び入国後講習の実施状況を記録した書類
五 前各号に掲げるもののほか、法務大臣及び厚生労働大臣が告示で定める特定の職種及び作業に係るものにあっては、当該特定の職種及び作業に係る事業所管大臣が、法務大臣及び厚生労働大臣と協議の上、当該職種及び作業に特有の事情に鑑みて告示で定める書類
2 法第二十条の規定により前項の帳簿書類を技能実習を行わせる事業所に備えて置かなければならない期間は、技能実習生が技能実習を終了した日から一年間とする。
第二十三条 法第二十一条第一項の技能実習の実施の状況に関する報告書は、技能実習事業年度ごとに、別記様式第十号により、技能実習の実施状況を記載し、翌技能実習事業年度の五月三十一日までに提出するものとする。
2 団体監理型技能実習に係る前項の報告書の作成は、実習監理を受ける監理団体の指導に基づいて行わなければならない。