交通事故

自賠責保険について

1 自賠責保険の意義

自動車による人身事故の被害者を救済するため、被保険者が被害者に自賠法3条の損害賠償責任を負担することによって被る損害について、一定額を限度として填補する保険をいいます。

2 強制加入

自賠責保険は、被害者救済の観点から強制加入の保険とされています。

違反者には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金といった罰則が定められています(自賠法第86条の3第1号)

3 自賠責保険の支払い要件

(1) 被保険者

以下の者が被保険者です。

ア 「保有者」(自賠法第2条第3項) 自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者で、事故のために自動車を運行の用に供する者をいいます。

イ 「運転者」(自賠法第2条第4項) 他人のために自動車の運転又は運転の補助に従事する者をいいます。

(2) 運行供用者責任(自賠法第3条)の発生

自賠法第3条の運行供用者責任の発生が要件の一つとなります。

(3) 免責事由

保険契約者又は被保険者の悪意によつて生じた損害については、保険会社が保険契約者に対して、保険金を支払わなくてよいとする免責事由としています(自賠法第14条)。

但し、自賠法第16条1項は、被害者から保険会社への直接請求権を認めており、保険会社はこの請求を拒否できません。自賠法は、人身事故の被害者の救済を目的としているので、故意による事故の場合でも、被害者からの請求に対しては保険金を支払うこととされているのです。

そして、被害者からの直接請求に応じて保険金を支払った保険会社は、その分を政府に請求することになります(自賠法第16条4項)。さらに、保険会社に保険金相当額を支払った政府は、故意に事故を起こした者らに対して、その分を請求することになります(自賠法第76条2項)。

4 自賠責保険の保険金の支払限度と支払基準

自賠責保険は、被害者救済の観点から強制加入とされている代わりに、保険金について限度額が定められています。

つまり、自賠責保険の保険金は、予め定められた支払限度の範囲で、自賠責保険の支払い基準に従い支払われます。

自賠責保険の支払い限度と支払基準は、次のとおりです。

(1) 支払限度

自賠法第13条は、自賠責保険の限度額を政令により定めると規定し、この規定を受けた自動車損害賠償保障法施行令第2条は、自賠責保険の限度額について、次のように定めています。

① 死亡  3000万円

② 後遺障害事案

ⅰ 介護を要する後遺障害事案   等級に応じて75万円~4000万円

ⅱ 介護を要しない後遺障害事案  等級に応じて75万円~3000万円

③ 傷害事案  120万円

(2) 支払基準

自賠法第16条の3第1項は、自賠責保険の保険会社は、保険金などを支払うときは、国土交通大臣及び内閣総理大臣が定める支払い基準に従って支払うべきと規定し、この規定を受けて、「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済等の支払基準」(このホームページでは、「自賠責の支払基準」といいます。)が定められています。

「自賠責の支払基準」は、国土交通省のホームページをご覧ください。→ 国土交通省のホームページ

5 減額事由 

「自賠責の支払基準」の「第6 減額」には、被害者救済の観点から、民法上の減額事由より緩和された減額事由などが定められています。

(1) 重過失減額

自賠責保険では、被害者救済の観点から、被害者に7割以上の過失がないと、保険金の減額がされません。

具体的には、次のとおりです。

減額適用上の被害者の過失割合減額割合
後遺障害または死亡傷害
7割未満減額無し減額無し
7割以上8割未満2割減額 2割減額
8割以上9割未満3割減額
9割以上10割未満5割減額

(2) 因果関係の判断が困難な場合

因果関係不明の判断が困難な場合(因果関係が無いと判断される場合ではありません。)には、5割の限度で保険金が支払われることになります。

6 支払方法

(1) 一括払い

加害車両に自賠責保険と対人賠償保険が付保されている場合に、任意保険会社が、任意保険を支払う際に、本来は自賠責保険会社が支払うべき自賠責保険金相当額も含めて保険金を支払い、後日、自賠責保険金相当額を自賠責保険会社に求償する扱い。

(2) 非一括払い

自賠責保険金だけが支払われるものです。

ア 加害者請求(自賠法第15条)

加害者が被害者に対して、損害賠償金を支払った後、自賠責保険会社に対し手自賠責保険金を請求する方法です。

イ 加害者請求(自賠法第16条)

被害者が、加害者の加入する自賠責保険会社に対して、直接保険金の支払いを請求する方法です。

7 後遺障害等級認定制度

自賠責保険においては、自賠責保険の保険会社が、後遺障害が残った交通事故の被害者に対して自賠責保険金を支払う際に基準となる後遺障害の等級を認定する制度が定められています。

本来、後遺障害による慰謝料の額や労働能力の喪失の程度(率)は、個々の交通事故や被害者の事情により千差万別ですから、最終的には、裁判所の訴訟手続きでこれらの事情を認定し、具体的な慰謝料の額や労働能力の喪失の程度を算定することになります。

しかし、裁判所におけるこれらの作業には、相当な時間と労力を要しますから、交通事故の被害者の迅速な救済につながりません。

そこで、自賠責保険制度は、第1級から第14級までの後遺障害等級を定め、これらの後遺障害の等級を認定することにより、定額的な後遺症慰謝料や予め定められた労働能力喪失率により算定された後遺障害逸失利益の支払いを速やかに行い、交通事故の被害者の迅速な救済を実現しようとしているのです。

自賠責保険の後遺障害等級認定制度については、こちらをご覧ください。→ 自賠責保険の後遺障害等級認定制度

※ 「自賠法」  自動車損害賠償保障法を指します。

※ 「自賠責の支払基準」 「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」(平成13年 金融庁 国土交通省 告示第1号)を指します。

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すぎしま法律事務所 弁護士 杉島健二(岐阜県弁護士会所属)

当事務所は、交通事故の被害者側の損害賠償請求を最重点業務としています。これまで、多くの死亡事故や後遺症のある事故を解決してきました。担当してきた後遺症は、高次脳機能障害、遷延性意識障害(いわゆる「植物状態」)、CRPS、大動脈解離、脊柱や各関節の変形障害・運動障害、むち打ちなどの神経症状など、多種多様です。弁護士費用特約が使えます

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