交通事故

5 保険制度について

1 保険の意義

保険とは、将来発生する可能性のある偶然的な事故について、そのような事故が起こりうる者たちが保険料などを拠出し、その拠出された保険料から実際に事故が起こってしまった者に対して保険金を支払うことで、偶然に発生した事故に対して経済的に対応しようとする制度です。

交通事故は、自動車を運転する者にとっては、誰にでも将来発生する可能性のある偶然的な事故なので、保険制度が不可欠なものとなります。

また、交通事故の被害者保護の観点からも、交通事故における保険制度は、今日の社会にとってなくてはならないものとなっています。

2 自動車保険 - 交通事故を想定した保険

交通事故を想定した保険を自動車保険といいます。

自動車保険は、加入が義務付けられている自賠責保険と、加入が義務付けられていない任意保険とがあります。

(1) 自賠責保険

原動付自転車を含むすべての自動車に加入が義務付けられている自動車保険で、正式名称を「自動車損害賠償責任保険」といいます。

交通事故の被害者保護を目的としており、人身事故の最低限の保障を実現しようとしています。

自賠責保険について詳しいことは、こちらをご覧ください。→ 自賠責保険について

(2) 任意保険

加入が義務付けられていない保険ですが、実際の損害額が自賠責保険の限度額を超える場合などには、任意保険から支払われることがありますので、自賠責保険と同様、任意保険に加入することは重要といえます。

任意保険は、事故の相手側の損害を補償する目的の保険と、自分の側(や同乗者など)の損害を補償する目的の保険に分類でき、主に次の種類があります。

Ⅰ 賠償責任保険

交通事故の発生により、被保険者が、第三者(被害者など)に対して法律上の損害賠償責任を負う損害について、保険金を支払うことなどを目的とする保険です。保険法上は、損害保険の一種類と位置付けられており、「被保険者が損害賠償の責任を負うことによって生ずることのある損害をてん補するものをいう。」(17条2項)とされています。

① 対人賠償保険 他人の生命身体を害した場合の賠償金をカバーする保険です。

② 対物賠償保険 他人の自動車を壊した場合の賠償金をカバーする保険です。

Ⅱ 傷害保険

賠償責任保険が、交通事故の相手方の損害をカバーする保険であるのに対して、自動車保険の中の傷害保険は、事故を起こしたり事故に遭ったりした運転者や同乗者の損害(こちら側の損害)をカバーする保険です。

① 人身傷害補償保険

被保険者が,いわゆる人身傷害事故により被った損害について、責任の確定や過失割合の決定を待たずに、保険契約上の損害額の算定基準により算定された保険金が支払われる実損填補方式の保険です。

交通事故を起こした運転者に大きな過失割合があり、事故の相手方から支払われる対人保険の保険金額が低額になってしまう場合などに、存在意義があります。

保険金は、定額ではなく、実損填補方式です。しかし、保険金の算定基準は各保険契約の約款で定められており、総じて、民事訴訟の損害賠償実務において採用されている算定基準より低いものとなっている点に注意が必要です。

人身傷害補償保険は、性質上はいわゆる傷害疾病損害保険契約の一つで、保険法上は傷害疾病定額保険ではなく、損害保険の一つとして位置づけられます。

② 自損事故保険

自損事故の場合に運転者や同乗者が死傷した場合で、自賠責保険などが支払われないときに支払われる定額方式の保険です。

現在は、人身傷害補償保険が入っている保険商品では特約として扱われ、そのような場合には自身障害補償保険が支払われないとき(適用されないとき)に補完的に自損事故保険が支払われます。

保険金は定額であり、保険法上は傷害疾病定額保険に分類されます。

保険金の種類は、①死亡保険金、②後遺障害補償金、③介護費用保険金、④医療保険金があります。

③ 無保険車傷害保険

相手自動車が無保険で、死亡や後遺症が生じた場合に、相手が賠償すべき損害が支払われる実損填補方式の保険です(ただし、自賠責保険の限度額を超える分に限られます。)。

現在では、人身傷害補償保険の特約として位置づけられており、人身傷害補償特約がカバーされない損害、すなわち、

ⅰ 人身損害補償保険による保険金が支払われない場合や、

ⅱ 人身傷害保険から支払われる保険金が無保険車傷害保険によって支払われる保険金の額と自賠責保険から支払われる額の合計額を下回っている場合

に限り、無保険車傷害保険の保険金支払われます。

無保険車傷害保険は、実損害をカバーすることを目的としています。

したがって、保険金は、定額ではなく、被保険者である被害者が加害者に対して有する損害賠償請求権の額が基準となります。

また、無保険車傷害保険は、性質上はいわゆる傷害疾病損害保険契約で、損害保険の一つとして位置づけられます。

④ 搭乗者傷害保険

契約車輌の搭乗者が搭乗中に生じた事故により死亡または後遺障害が残った場合に支払われる定額方式の保険です。

保険金は定額であり、保険法上は傷害疾病定額保険に分類されます。

保険金の種類は、①死亡保険金、②後遺障害保険金であり、後遺障害のない単なる傷害の場合には保険金は支払われません。

Ⅲ 車両保険

自分が運転する自動車が壊れてしまった場合に、その修理費などを支払ってくれる実損填補方式の保険です。

保険法上は損害保険に分類され、性質上は物(財産)保険に分類されます。

3 社会保険 - 自動車保険を補充する役割のある保険

上記の自賠責保険や任意保険は、民間の保険会社が販売する保険ですが、国や地方公共団体が保険の主体となっているものを公保険といいます。

公保険には、健康保険、労働保険、雇用保険などがあります。

このような公保険は、交通事故の際にも適用されることがあり、その意味で、自動車保険を補充する役割があるといえます。

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すぎしま法律事務所 弁護士 杉島健二(岐阜県弁護士会所属)

当事務所は、交通事故の被害者側の損害賠償請求を最重点業務としています。これまで、多くの死亡事故や後遺症のある事故を解決してきました。担当してきた後遺症は、高次脳機能障害、遷延性意識障害(いわゆる「植物状態」)、CRPS、大動脈解離、脊柱や各関節の変形障害・運動障害、むち打ちなどの神経症状など、多種多様です。弁護士費用特約が使えます。

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